精神疾患で休職・退職したときに知っておきたい『障害年金』
2026.05.18精神疾患で休職・退職したときに知っておきたい『障害年金』
〜お金の不安をひとりで抱えこまないために〜
朝、布団から起き上がるだけで一日のエネルギーを使い果たしてしまう。そんな日が何ヶ月も続いていませんか。お医者さまから休職をすすめられて、ようやく仕事を離れたものの、今度は通帳の残高が頭から離れない。傷病手当金もいつかは終わってしまうし、その先のことを考えると胸がぎゅっと締めつけられる。
そんなふうに眠れない夜を過ごしているあなたは、決して怠けているわけでも、お金にだらしないわけでもありません。むしろ、必死に自分の人生に向き合おうとしている証拠です。お金の不安は、心の回復にとって大きな足かせになります。だからこそ知っておいてほしい制度があります。それが障害年金です。
この記事では、障害年金がどんな制度なのか、精神疾患でも対象になるのか、申請のときに何がポイントになるのかを、できるだけやわらかい言葉で一緒に整理していきます。読み終わるころには、ほんの少しでも肩の力が抜けていますように。
目次
1. 障害年金とはどんな制度なのか
障害年金と聞くと、身体に重い障害がある方のための制度というイメージを持っていらっしゃる方が多いかもしれません。けれども実際は、病気やけがで日常生活や働くことに大きな支障が出ている方を、現役世代のうちから支えてくれる公的な制度です。長期療養が必要ながんや糖尿病なども対象に含まれていて、もちろん精神の病気も対象になります。
年金というと老後にもらうものという印象があるかもしれません。けれども障害年金は、人生の途中で予想もしなかった病気やけがに見舞われたとき、生活そのものを支えるために用意されています。障害者手帳を持っていなくても受給できる可能性がある制度です。そのことを知らずに、自分には関係ないと思い込んでしまっている方が、本当にたくさんいらっしゃいます。
うつ病や統合失調症も対象になります
精神の病気のなかで障害年金の対象となるのは、うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害、知的障害、てんかん、認知症などです。これらの病気によって日常生活や仕事に著しい制限が出ているとき、症状の重さに応じて1級から3級までの等級が判定されます。
障害年金の2つの種類
- 🌿 障害基礎年金…初診日に国民年金に加入していた方、20歳前に初診日がある方が対象。1級と2級があります
- 🌿 障害厚生年金…初診日に厚生年金に加入していた会社員や公務員などが対象。1級から3級まであり、より広い範囲をカバーします
- 🌿 令和8年度の障害基礎年金は、1級が年額1,059,125円、2級が847,300円で、お子さまがいる場合は加算もあります
傷病手当金が支給される期間は通算で1年6か月までと決まっています。療養が長引いて手当金が終わってしまったあとも、暮らしを支える仕組みとして障害年金が用意されています。傷病手当金から障害年金へ、生活の支えがバトンタッチされていくイメージで考えていただくと、少しわかりやすいかもしれません。
2. 受給するための3つの条件
障害年金を受け取るためには、3つの条件をすべて満たしている必要があります。少し事務的なお話になってしまいますが、ここを丁寧におさえることが、ご自身の暮らしを守る第一歩になります。
障害年金を受給するための3つの条件
- ☀️ 初診日要件…病気で初めて病院にかかった日に、年金制度に加入していたこと
- ☀️ 保険料納付要件…初診日の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上が納付済みか免除されていること
- ☀️ 障害状態要件…障害認定日に、定められた障害等級に該当する状態であること
なかでも特に大切になるのが、いちばん最初の初診日です。初診日とは、その症状で初めてお医者さまにかかった日のこと。たとえば、最初は不眠や頭痛で内科を受診し、その後に精神科や心療内科にかかった場合は、内科を受診した日が初診日になることもあります。
初診日と納付要件で迷ったときは
何年も前のカルテをさかのぼったり、転院を繰り返していて初診日があいまいだったりすると、ご自分ひとりで整理するのはとても大変です。保険料の納付状況についても、過去に経済的に苦しい時期があって未納が続いていた方は、不安に感じていらっしゃるかもしれません。
けれども、保険料を納めるのが難しい時期に免除や猶予の手続きをしていれば、納付済み期間として扱われます。あきらめる前に、お近くの年金事務所や市区町村役場の窓口でご自分の年金記録を確認してみてください。窓口に出向くのがしんどいときは、ねんきんダイヤルへの電話やねんきんネットでの確認という方法もあります。
手続きの煩雑さに圧倒されて、申請する前から心が折れそうになっているあなたへ。
ひとりで抱えこまなくて大丈夫です。
頼れる人や場所は、思っているよりたくさんあります。
3. 申請の鍵を握る診断書と日常生活の伝え方
精神の病気で障害年金を申請するときには、精神の障害用という専用の診断書が使われます。審査では、この診断書に書かれた内容がほとんどすべてといっても言いすぎではありません。なかでも重要視されるのが、診断書の裏面にある日常生活能力の判定と日常生活能力の程度という項目です。
この項目では、適切な食事がとれているか、身辺の清潔を保てているか、お金の管理や人とのつきあいに支障はないかといった、生活の細かな場面が評価されていきます。診察室の数分間では伝えきれない、自宅での本当の姿こそが審査の決め手になります。
🌈 診察室で伝えにくい日常の例
ここ2週間お風呂に入れていない。冷蔵庫の中身が腐っていても片づけられない。家族からの電話に出られなくなって関係が途絶えてしまった。スーパーのレジに並ぶ前に動悸がして引き返した。こうした生活のリアルは、診察の場で穏やかな表情を保っている方ほど、お医者さまには見えにくいものです。
訪問看護師ができるサポート
精神科の訪問看護師は、利用者さまのご自宅にうかがって、日々の生活の様子を間近で見せていただいています。お薬がきちんと飲めているか、食事がとれているか、夜は眠れているか。そうした一つひとつの暮らしの手ざわりを、看護師は週に何度も目にしています。
訪問看護師がお手伝いできること
- 🌱 日常生活の様子を主治医に正確にお伝えするお手伝い
- 🌱 困っていることを言葉にする練習や、メモにまとめるサポート
- 🌱 申請手続きの流れの整理や、相談できる窓口のご案内
- 🌱 申請後も体調が揺れたときに寄り添うこと
「先生の前では緊張して何も言えなくなる」「いつも大丈夫ですと答えてしまう」というお声もよく耳にします。看護師がふだんの様子を主治医にお伝えすることで、診断書に実情が反映されやすくなり、結果として的確な審査につながっていきます。社会保険労務士さんのような申請の専門家へおつなぎすることも、必要に応じて行っています。
4. まとめ・お金の不安を抱えこまないでください
心の病気で療養しているあいだ、お金のことを考えずに過ごせる方はほとんどいらっしゃいません。お金の不安は、回復しようとしている心をさらに削ってしまいます。だからこそ、使える制度をきちんと使うことは、決して後ろめたいことではなく、ご自分を守るための大切な選択です。
障害年金は、これまでに納めてきた保険料があるからこそ受け取れる、あなたの正当な権利です。手続きが複雑で気力が湧かないとき、ひとりで抱えこまずに、頼れる人を頼ってください。安心してゆっくり休めることが、回復への何よりの近道になります。
訪問看護ステーションリスタでは、精神科に特化した看護師が在籍し、一人ひとりの状況に合わせたケアや支援を行っています。少しでも気がかりなことや不安があれば、いつでもお声がけください。
📚 参考資料
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